お腹は腹痛によって鍛えられるのか。
大学生の頃の話。
インドへの二週間の初バックパッカー旅行を終えて帰宅した私は腹痛で悶え苦しんでいた。
お腹が痛いのだ。とても。
どのくらい痛いのかというと、すごく痛い。
死ぬほど腹が痛いという事は何度もあったが、腹が痛くて死ぬと思ったのはあの時だけだ。
腹痛で夜中眠れずに呻き声を上げていた私はふと「あ、死ぬ」と思った。
思っただけだった。
お腹の中で宇宙の破壊と創造が繰り返されているような。ブラックホールで締め上げられビッグバンでぶん殴られる。お腹の中で最終兵器彼女のクライマックスが延々と繰り広げられている。
ボキャブラリー不足で上手く表現できないが一言でいうとこうだ。
すごく痛い。
すごく痛いお腹が3日続いた。
そして止まらない。
下痢が。
とめどなく出てくる。それこそ源泉かけ流しのように。
口に入れた飲み物がボブスレーの如く尻穴から飛び出してくる。
我先にとお菊へ向かう。
尻を介して飲み物をトイレに運ぶだけの道具に成り下がっていた。
ボブスレーは10日続いた。
10日間のボブスレーの間に私は5キロ痩せた。
ここ数年の身体測定で1キロたりとも上下しなかった私の体重が5キロ減った。
いつ測っても55キロの私の体重が50キロになっていた。
ダイエットなら大成功だがそうではない。
やつれているだけだ。
骸骨みたいになっていると友人に言われた。
そこで初めて鏡を見た。
やつれた顔でニヤニヤしてる奴がいた。
やつれかたが尋常ではない。
あいつあんぱんやってんだぜと言われたら信じただろう。
そしてこの時期、大学生の間で麻疹が流行っていた。
多くの大学で在学生を対象に麻疹の予防接種を実施していた。
私の大学でもそうだった。
しかし私は友人に止められた。
お前は受けるなと。
今予防接種を受けたら麻疹にかかると。
確かにそうだ。
予防ではなく感染する。
当時の私にはその自信があった。
予防接種ではなく予防感染だ。
それはもはや予防ではない。
予防ではない何かだ。
それ程までに体力が低下していた。
予防接種を受けたつもりが感染して意気揚々とウイルスを撒き散らしながら帰路に就く事になるだろう。
いやしかし1度麻疹にかかっておけば免疫ができ・・・ないな。
実際感染するのかは知らんけど。
そしてボブスレーが10日間続いた時私はこう思った。
病院に行こう。
お医者様は言った。
ただの腹痛だと。
宇宙創造は繰り広げられていないと。
温めたポカリを飲むと良いと。
そして私はポカリ信者になった。